Mussel Docking World

発汗、発光の末、発酵!をモットーに、音楽的な活動をする二人組、Mussel Docking (マッスル・ドッキング)のブログです。

DQのBBQ(ドン・キホーテのバーベキュー会場設営)とダイシン百貨店

数日前のニュース記事で気になったものがあるので紹介がてら感想などを述べたいと思います。

ドン・キホーテ/溝ノ口駅前店屋上にバーベキューテラス」(http://ryutsuu.biz/topix/g071108.html)という記事。

引用すると、

ドン・キホーテは8月9日、川崎市の「ドン・キホーテ溝ノ口駅前店」屋上に「デジキュー×D-SPACE BBQテラスドン・キホーテ溝ノ口駅前店」(D-SPACE BBQテラス)をプレオープンする。

ということです。
8月9日にプレオープンとのことですが、同月下旬にはグランドオープンを予定しているとのこと。
再度引用します。

オープンテラスのバーベキュースペースそばにキッズコーナーを用意し、学生やビジネスマンに加え、子ども連れの家族も幅広く楽しめる店舗空間を目指す。

2箇所の引用元:「流通ニュース」2014年7月11日の記事 http://ryutsuu.biz/topix/g071108.html

この記事を読んで思い浮かべるのは、イオンモール幕張新都心http://makuharishintoshin-aeonmall.com/)のこと、というのは嘘ではないのですが、しかし第一想起はダイシン百貨店(http://www.daishin-jp.com/)でした。

やや陳腐化した言葉で敢えて言うならば、「モノからコトへ」を推し進める小売業ないし商業施設というのが、ここのところ注目されておりますが、この、ドン・キホーテが屋上にバーベキューテラスを設け、それだけでなく、老若男女*1の憩いの場づくりを目指しているというニュース記事は、今はそれほど注目されている様子がうかがえませんが、今後相当注目を集めるのではないか、と思っています。

小売業の中で、総合ディスカウントストアという小売業態という位置付けをされることが多い、ドン・キホーテ。もちろん驚きの安さと書いて驚安の殿堂を自認するドン・キホーテですが、決して安いだけの店ではないのは、もはや広く認知されていることでしょう。
創設者であり前社長(先日退任されました)でもある安田氏いわく、「プアDSとは一線を画す」と自社が展開する店舗を称しています。ここで氏がおっしゃるプアDSとは何か、ということですが、ただただ廉価品を販売することに特化したかのようなディスカウントストア(DS)で、売場には買い物の体験そのものを楽しむ(楽しめる)要素など皆無といった、日々の生活において家事労働の一種として位置付けられる買い物を淡々とこなすためだけの売場ないし店舗を指しています*2はディスカウントとコンビニエンスとアミューズメントの要素を重視している、と、自社ウェブサイトで謳っていますが、アミューズメント要素を強く意識した小売業である点は異論なきことのように思います。

先に名を挙げさせてもらいましたが、東京都大田区山王地区で、現在は1店舗のみを運営しているダイシン百貨店(http://www.daishin-jp.com/)、こちらの店舗は、マスコミで取り上げられる時、その多くは、超ロングセラー商品を取り扱っている点や、とにかく高齢者のための品揃え、売場づくりを徹底している点が強調されているのですが、その実、西山社長いわく、「高齢者だけではなく幼い子どもたちを大切にしている」ということなのだそうです。子供たちは自らが商品を買うために来店をする、ということよりも、百貨店ならではの各種イベント(最大にして大盛り上がりを見せるのが8月に屋上で行われる山王祭!)に参加したくて親と一緒に来店、来店したらレストランで食事したり、買い物を楽しむ、ということで、コトを起点にモノの購入に繋げているという、最近はやりのモノからコトへを、コトの体験を通じて(経て)モノを買ってもらう流れを作っているのだと思います。
なお、ダイシン百貨店には、社長の、百貨店は元来文化の発信拠点だった、ダイシンは大森地区でそのような存在になるのだ、という考えを反映して、ウッドデッキのある書店があり、カフェも併設されていて、接する空間ではアートイベントも開催されます。また、他のフロアには足湯もあり、地域住民の憩いの場になっています。

強引に話を戻すと、DQのBBQ(ドン・キホーテのバーベキュー)会場の設営は、ダイシン百貨店の屋上イベントを彷彿させます。
本来、商業施設は空間を極力、売場、すなわち商品で埋めたい(多くの商品を置きたい)はずです。それはもちろん売れる可能性で空間を埋めたいからです。
広大な空間を擁するショッピングセンターならばいざしらず、必ずしも巨大空間とは言えないような大きさの商業施設でイベントなどコト消費や時間消費型と呼ばれるような空間活用を行うようになっているのは、高い集客力への期待がまずはあるのだと思います。屋上は余剰空間であり、以前は百貨店が屋上遊園地を設置し、時間消費の現場となっていました。船橋東武百貨店屋上遊園地を懐かしく思い出します。しかし百貨店の屋上庭園、屋上遊園地はいつのまにかすたれ、併設された美術館もかなり減りました。

DQのBBQ会場設営は、イオンモールとは違ったかたちでコト消費の流れを作れるのか、はたまた、後に続く他社を産むのではなく、これまでと同じように真似のできないDQならではの取り組みとして成功を収めるのか――8月を楽しみに待ちたいと思います。

*1:「老」については記事で言及されているわけではありませんし、一般的にイメージされるであろうドンキの印象は老あるいはシニアとは寧ろ真逆に位置付けられるようなものではないか、と思いもしますが、当然ながらバーベキューという食のコト化、コト化された食、食を通じたコミュニケーション…を軸に据えた交流空間を作ろうとすること自体が、若者だけ、などという特権化された消費者を想定していないのは明白ですし、ねぇ。

*2:参考文献:安田隆夫著「情熱商人」)。 ドンキ((以降で述べていることは、ドン・キホーテのみならず総合スーパーのかつての代表的企業であった長崎屋を不振から復活させたMEGAドン・キホーテや、エッセンス、ピカソなどの小型業態まで、ドン・キホーテHDが運営する各業態に通じることです。