Mussel Docking World

発汗、発光の末、発酵!をモットーに、音楽的な活動をする二人組、Mussel Docking (マッスル・ドッキング)のブログです。

ジョンとポールの融合形

Alfredです。12月8日の夕陽ヶ丘さんCD発売イベントでは、夕陽ヶ丘さんはじめ、個性がはじけた実力派の皆さんと共演できて楽しい経験でした。
我々のライブを見てくれた方々、どうもありがとうございました!
そのライブのフライヤーには珍しく僕が文章を寄せたんですが、どうせなのでブログでもその文章を公開します。以下に転載いたします。

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「ジョンとポールの融合形」

 71歳のポール・マッカートニーが来日の話題を振りまいた翌月だし、今日はジョン・レノンの命日なので、ビートルズの曲を演奏したい。「She loves you」に挑戦させてもらいます!ビートルズの魅力は多面的だけど、なかでもジョンとポールのコーラスの重要度はとても高いと思います。難しいけど真似したい!

 後期のビートルズはジョン曲とポール曲の傾向がキレイに分かれて、歌詞もメロディーも対極的になっていったと思います。そのよい例が両A面として発売された「Strawberry Fields Forever/Penny Lane」であり、先日この2曲についてブログに書きました。対して、「She loves you」とか「I want to hold your hand」といった初期の代表曲は、二人いっしょに曲を作っていただけあって、両者の個性が溶け合ってます。

 ふつうのラブソングは、「私(I)」から「あなた(You)」へ呼びかけるか、「あの人(she/he)」への思いを「私」が独白するか、という形を取ることが多いと思いますが、この歌は珍しく「あの人」が「あなた」を好きなのだと「私」が呼びかけてます。She loves youなんて文章としては何ということもないなのに妙なインパクトがあるタイトルだな、と常々思ってたのですが、考えてみるとラブソングのタイトルとしてはかなり特異なわけです。単純だけど妙な感じがする部分を突いてくるのもまた、ビートルズの魅力の一面だと思います。

 「彼女がお前を好きだってさ」という形を考えたのはポールだと、ジョンが後年述べているそうです(Wikipdia情報)。「I love youの代わりに第三者を登場させた。これはポールのアイディアです。そういうところがいまだに彼の作品にはあります。僕はもっと自分自身について書く傾向がある」。確かにポールの曲には「Eleanor Rigby」や「Another Day」など、三人称主体のものが多い気がするし、ジョンの曲は内省的なものが中期以降は増えているので、ポールとの違いを述べるジョンの言葉はうなずけます。その点、「She loves you」は、三人称の「彼女」について歌いつつも、歌われているのは結局「私(I)」のことではないかと思うのです。「彼女がお前を好きだって」と絶叫し、「そんな恋愛をしたら、お前は嬉しいはずってわかるだろ(With a love like that, you know you should be glad)」と繰り返す「私」は、単なるおせっかいなのか(おせっかいにしては相当しつこい)、彼女が自分に振り向いてくれない悔しさを隠そうとしてるのか(だとしたらだいぶ虚勢を張っている)。どう解釈するにしても、「彼女」や「お前」ではなく、「私(I)」という人間がぐいぐい前に出てくるのは変らない。自分のことは何も語っていないのに!三人称で自分を語る。ジョンとポールの融合形。

 今日はBOØWYの「季節が君だけを変える」も演奏します。氷室さんと布袋さんの個性のぶつかり方はジョンとポールばりで、憧れます。